ブルースの歴史
ブルースは十九世紀後半にアメリカ南部で生まれました。
それは、アメリカ社会における黒人の地位が大きく変わろうとする時期でした。
奴隷制度が廃止されたことは、黒人が白人と同等の権利を得るということにはなりえず、むしろ社会のいたるところで、人種差別の影が差し始めたのです。
それでも黒人たちは、日々明るさを失いませんでした。
バンジョーの調べに乗せて、思いのままに歌い踊ることで、この世に生を受けた喜びを感じることができたのです。
抑圧された日々の鬱憤を晴らすために黒人たちが歌い踊る、それがブルースの始まりでした。
二十世紀初頭には黒人のブルース・シンガーが次々登場しますが、ストレートに物事を訴える彼らの魂の叫びは白人社会をも貫き、ブルースはやがて、世界のポピュラー音楽の一大潮流を生み出すことになりました。
アメリカではエルヴィス・プレスリーが、イギリスではビートルズやストーンズが。ロックはブルースから生まれました。
ダンスにおいてもブルースは、絶大な影響を及ぼしました。
一見、男女が向かい合って体を静かにゆすぶっているだけのダンス。しかし、その独特のリズム感、アクセントを後ろにずらして踊るシンコペーションの感覚は、なんともいえない心地よさがあったのです。
ブルースがヨーロッパに伝わると、ちまたのダンス熱は一気に高まり、ワルツなど従来のダンスを踊るときも、好んでシンコペーションの感覚を取り入れるようになりました。
が、人目をひく派手なステップや、定型のステップが存在しなかったせいか、ブルースはコンペティション・ダンスとしては定着しませんでした。
しかし、誰もがいつ、どこでも楽しめるダンスとして存続していることに、他のダンス以上の生命力を感じます。